【Q&A 具体的なノウハウーーーこれまでの皆さんの質問から】


−− BBS「連句KUSARI」は2020年8月31日にて終了しました。 −−

[連句KUSARI]のルールは、あくまで冒頭の【連句の原則】だけです。しかし、このBBSには連句をよく知っているかたのほか、まったく初心のかた、俳句や、川柳だけをなさるかた、、いろいろなかたが参加されています。そこで、連句での一般常識、方法論について、またこの[連句KUSARI]での具体的な運用をどう考えているかについてのご質問と答えを、ここに付け加えておきます。

めぎつね


 

〜目次〜

−− BBS「連句KUSARI」は2020年8月31日にて終了しました。 −−

●1[連句KUSARI]について
 1.字余り・字足らずーーなるべくしないこと
 2.付け句の一句独立って何?――文章の接続の「けれど」はつかわない。
 3.切れ字を付け句で使っていい?――「や」「かな」はやめよう
 4.四三(しさん)はなるべく避けよう
 5.月の座・花の座は?
 6.恋の句は、受けるのが一応のエチケット
 7.季節の句についてーー季節句は季語を使った句。季語のない句は雑(無季)の句
 8 秋は三句続けなくていい?(99,12,9)
 9.夏の句がつづいたあと春になるのは変じゃないですか? (00,2,6)
10.「季移り」はいけない?(00,2,6)―――矛盾がなければ○
11.「季戻り」って何? (00,2,6)
12.二重季語(一句の中に二つ季語を使うこと)は? (00,2,6)あまりよくないけれど
13.ベタ付けがあったときはーーーつぎのひとがエイッと転じる (1999.11.1)
14.前句と同じ字、素材、表現を付けるのは?(00,2,5)―――「すりつけ」.×ではないが
15 「昭和は終わり」という句の七句あとに「昭和の夢の」が出ているのって、よくありませんよね。(99,12,9)
16.転じてない−−−−って、どういう句?(1999.11.1)
 (1)三句が続いたストーリーになっている。(三句がらみ)
 (2)ウチコシ句へまた戻る感じがする(観音開き・輪廻)
17.「ウチコシの障り」「差し合い」って何?(00,2,6)
18 転じーー ウチコシのチェック―――単語からチェックする伝統的な方法です.参考までに.
19 自他場って何?―――転じの方法論


 

●1 [連句KUSARI]について

1.字余り・字足らずーーなるべくしないこと。(1999.7.3)
575,77は原則です。連句では特に下句の字余り・字足らずは、つぎの人へのリズムがこわれるので極力避けましょう。(なお、575、77は、書いた字数ではなく、声にだしたときの音数です。例 シャシン(3音))

2.付け句の一句独立って何?(1999.11.1)
連句の中の句は付け句であっても、575句も、77句も一句が独立して意味を完結させなくてはいけない−−という基本です。
    例    姉さんがにっこり寄せたタバコの火 (前句)   
        × もらっておちる悪の泥沼     (付け句)
*この付け句は前句がないと何を「もらって」かわからないので、これは前句に意味をよりかかっているので、×です。
         姉さんがにっこり寄せたタバコの火
        ○ ずぶずぶおちる悪の泥沼
*「けれど」「だから」「でも」「それで」のような接続詞、「それを」のような指示代名詞も、前句をよりどころにしている場合は×

3.切れ字を付け句で使っていい?――「や」「かな」はやめよう
切れ字は発句で使うもので、付け句では使いません([連句KUSARI]はすべて付け句ですね)。また、「切れ字」という概念は俳句の根本でもあり、難しい。 初心のかたはとりあえず「や、かな」を避けておいてください。

4.四三(しさん)はなるべく避けよう(1999.9.27)
伝統的な作法では七七句の下の七音のリズムが4−3になるのを、四三(しさん)といって嫌ってきました。リズムの座りが悪く、つぎの句への流れが損なわれるという考えです。
    例 ひとりの夜にゴキブリ叩く (ゴ・キ・ブ・リ)4(タ・タ・ク)3―――四三
こういうとき、私たちはちょっとマズイナと考えてこう直します。
       ひとりの夜に叩くゴキブリ (タ・タ・ク)3(ゴ・キ・ブ・リ)4
座りがよく決まるでしょう。連句になれてきて、内容だけでなくリズムにも気を付ける余裕が出てきたら、句を作るときに参考にしてみてくださいな。但し、このBBSでは四三(しさん)を禁じてはいません。実は四三でもリズムを保てる場合もあるし、四三でなくては表現できない内容もあります。クラシックなリズム感をわざとこわす新しさもあるかもしれませんから。白状すると、私自身は永いことしつけられてきましたので、よほどの強い意識がないと四三の句はできません。敢えてやるのは二年に一度くらいかな?

5.月の座・花の座は?(1999.7.3)
鎖連句は定数連句ではありません。歌仙などのように型式、構成がありません。従って、月(天体の月)の座、花(賞美の花。ふつうは桜の花)の座も決まってないし、恋の決まった出所もありません。そのときの流れや、前句から発想して自然に月の句、花の句をどうぞ。

6.恋の句は、受けるのが一応のエチケット
恋がしたかったら、どうぞいつでも。ただ、人生の花である恋の句は、たいせつに楽しみましょう。なるべく1句だけですてないで、恋が呼び出されたら、つぎのひとは受けましょう。これは一応のエチケット。

7.季節の句について
 連句、俳句の常識では季節句は季語を使った句。季語のない句は雑(無季)の句です。季語をご存じないかたは季語集・季寄せ・歳時記をご参照ください。お勧めは「連句俳句季語辞典 十七季(三省堂)東明雅・丹下博之・佛淵健悟共編」。でも、くれぐれも、「季語」だけに寄りかかったつまらない句をでっちあげないように。季語は季節感があってこそ。付け句は、いつも前句から発想しましょう。既存の季語は現代に通用するか。ある単語にある季節を固定する、季語という概念そのものへの疑問ーーなどの問題提起もこのBBSでされていますね。これからみんなでじっくり考えていきましょう。

8.秋は三句続けなくていい?(99,12,9)
歌仙などでは春、秋は三句以上、夏は1,2句続けるという決まりがありますね。この[連句KUSARI]では、今のところ季節の句数については自由にしています。

9.夏の句がつづいたあと春になるのは変じゃないですか?(00,2,6)
連句ではふつう季節句と季節句の間には雑(無季)の句がはいって、変化していきます。
    例 夏―夏―雑―雑―冬―雑―雑―雑―雑―秋―秋―秋―雑
このとき春ー夏ー秋ー冬という四季の順番は、連句では関係ありません。
ただし、雑をはさんで同じ季節は続けないのが常識です。連句は「変化」がたいせつなのです。でも、このインターネットKUSARIでは、前の季節をさかのぼって句を確認するのにかなり手間取りますから、同季節は5句くらい間を置けばいいことにしましょう。(06,12・27)


10.「季移り」はいけない?(00,2,6)―――矛盾がなければ○
9の原則のように雑(無季)の句をはさまずに、直接四季が移ってしまうことを「季移り」といいます。意味上、無理なことが多いのですが、矛盾がなければ×ではありません。
   「季移り」×の例    風花に明日の約束繰り返し   (風花   冬)
                ×  春雷遠く聞く昼さがり      (春雷   春)

11.「季戻り」って何? (00,2,6)
  同じ季節(四季)の句つづき (例、春―春―春)の中で、季節感が戻ってしまうことをいいます。わかりやすい例でいえば桜の句のつぎに梅の花の句を付けるのが季戻りで、確かに変でしょう? 例をあげます。
     [例 ]     花雪洞の頬をそめゆく      (花雪洞   春)
           ×お水取り誘う便りを今日受けて  (お水取り   春)
ともに春ですけれど、桜の花雪洞(晩春)に頬を染めている人が旧暦二月の行事であるお水取り(初春)へ誘われるのはおかしいですよね。

12.二重季語(一句の中に二つ季語を使うこと)は? (00,2,6)
あまりよくないけれどただ、連句では俳句ほどきびしくありません。必然性があって、内容がだぶったり矛盾しなければ○

13.ベタ付けがあったときはーーーつぎのひとがエイッと転じる (1999.11.1)
べた付けの句(前句とぴったり付いている句)は、連句、付け句に馴れてないころは多いものです。この[連句KUSARI]は時々ありますね。付かない句よりはいいです。でも流れはとまりますので次の人が転じに苦労します。
    例    @  出会った彼と今日は晴れの日
         A七色の光を浴びて高砂や      (べた付け)
         B  しっぽがちらりあれはめぎつね
@にAは晴れの日に結婚式でベタ付け。こんな時つぎの人は、意識的にエイヤッと、このBみたいに転じてください
もちろん馴れたらあまりベタ付けしないようにね。

14.前句と同じ字、同種素材を付けるのは?(00,2,5)―――「すりつけ」.×ではないが
全く同じ単語「さわやか」に「さわやか」とか「春雨」に「春灯」をつけたりするのは付け句として意味がだぶりますからかんべんね。ただ、同字(簡単ーに単語 とか、せんべい布団に団子とか)、同種素材(食べ物に食べ物、動物に動物 植物に植物など)は、、ウチコシでは×ですけど、隣の句では「すりつけ」といって、寛容です。あまり歓迎はされませんけど。
但し、色名に色名(例 赤に青)を付けるのは「色立て」といって、テクニックのひとつです。

15.「昭和は終わり」という句の七句あとに「昭和の夢の」が出ているのって、よくありませんよね。(99,12,9)
いけないわけではないけれど、つまらないですよね。みんなのイメージに印象が残る言葉ですから。あ、ひとの句を読んでないなーーと思われるよ!

16.転じてない−−−−って、どういう句?(1999.11.1)
転じてるか転じてないか、議論したら難しいですね。けっきょくは仲間の知性と感性での判断ですよね。はっきり転じてない例をあげます。
(1)三句が続いたストーリーになっている。(三句がらみ)
    例A  @  出会った彼と今日は晴れの日      
         A七色の光を浴びて高砂や 
        ×B   思いもかけず成田離婚に 
出会った彼と結婚式をあげ結局成田離婚になってしまうと、同じ主人公の続いた物語。13の例の転じてる例と比べてください。
(2)ウチコシ句へまた戻る感じがする(観音開き・輪廻)
    例B   @   エステ通いの街に春雨     
          A 若者が傘さしかける沈丁花  
         XB   予報はずれの雪がちらちら  
       春雨――傘――雪では、どうも景色が元へ戻ってしまうでしょう。
    例C   @   ビールの瓶がずらりならんで     
          A 冷蔵庫だけが父さんのおともだち       
         XB   釣り餌のウジがもう蠅になり  
      @とBは冷蔵庫にはいっているものですから、付けの発想が繰り返しになってるでしょう。。

17.「ウチコシの障り」「差し合い」って何?(00,2,6)
「障り」「差し合い」とは連歌俳諧用語で、「イケナイこと」です。式目(ルール)違反をいいます。
   「ウチコシの障り」はウチコシ(打越)にイケナイ問題があること。

18 転じーー ウチコシのチェック―――
単語からチェックする伝統的な方法です。これまでの連句のものの見方の参考までに。
(1)ウチコシに同素材を避けること。
   *同じ素材 たとえば16の例Bは「春雨、雪――降り物のウチコシでいけない」と言います。ウチコシ句に同素材を使っているとたいてい転じませんよね。
素材例(常識的に判断してください。以下の例は連句での古典的な素材分類です)
神仏 無常 述懐 妖 病気 人名 地名 天象 山野 水辺(海、川など) 降物 聳物(そびきーー霧、煙) 生類(獣・虫・鳥・魚) 植物(木・草・竹) 衣類 飲食 居所(建物) など。現代では 家族 スポーツ 芸能 芸術 学問 家族 など加えます。
(2)同じような表現。(よくある例) 
   ×行体 のウチコシ  「走る」 のウチコシに   行く、帰る、跳ぶ、
   ×肢体 のウチコシ  「目」のウチコシに      背、口、骨、手、足

19 自他場って何?―――転じの方法論。
  芭蕉の弟子立花北枝が考案したといわれ、蕉風伊勢派に伝わる転じの方法論です。
  各句を自、他、場、自他半の4種類に分析して、同じ種類(自―自)がウチコシにこないようにします。
@人情 自の句(自分)           (例) エステ通いの街に春雨/ 春雷遠く聞く昼さがり   
A人情 他の句(他の人))         (例) 船長さんはダンスおじょうず/ほそい腕で猫を抱きあげ 
B人情 自他半(ジタハン 自分と相手と)(例)出会った彼ときょうは晴の日 
C場(バ、人がいない風景)         (例)予報はずれの雪がちらちら 
 知っておくととても便利ですが、無理に分類したり、こだわりすぎないようにね。

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